この記事では、わたしにお店をはじめるきっかけをくれた、二人目のことを書きたい。
彼女と出会ったのは、彼女が経営しているコーヒーショップだった。
兵庫で二年ほど引きこもりの生活を送っていたわたしは、京都の喫茶に足を運んだあと、「珈琲をもっと知りたい」と思うようになった。
それまで、正直わたしは珈琲をほとんど飲んだことがなかった。カフェインが得意ではなく、むしろ避けていたくらい。でも、あの静かな喫茶で心を動かされ、「勉強してみたい」と思ったのだ。
とはいえ、どうやって珈琲を学べばいいのか分からず、ぼんやりとインスタグラムを眺めていた。すると、家の近くのカフェでコーヒースクールを開いていることを知った。
一度だけ夫と訪れたことがある店だった。かわいい店員さんがいて、緊張してうまく話せなかった記憶がある。そのころは、スーパーのレジの人と話すのですら怖いと思うほど、人と関わることに怯えていた。だから、スクールに申し込むのもとても勇気がいった。
それでも思い切って予約した。
初日のスクール。待っていたのは、あの時接客してくれた店員さん「いつさん」だった。
わたしより少し年上の、明るくてかわいい女性。自分とはまるで違うタイプだと感じた。
珈琲が果実の種であることすら知らなかったわたしに、彼女は一から丁寧に教えてくれた。2時間ほどの珈琲の講座はとても面白くて、気づけば緊張より楽しさのほうが大きくなっていた。
最後に「どうして今日、講座を受けてみようと思ったんですか?」と聞かれた。
わたしは正直に答えた。
「いつか自分のお店を持ちたくて。珈琲のことを何も知らないから、学びたいと思って…」
すると、彼女は少し考えてから言った。
「じゃあ、うちで働いてみませんか?」
それが、わたしといっちゃんとの出会いだった。