それから、いっちゃんと京都に行くことになった。
わたしから見ていっちゃんは、雲の上の存在だった。
ひまわりのように明るくて、やさしくて、かわいい。かわいいというのは、見た目がかわいいというのももちろんだけど、それだけじゃない、なんと表現したらいいのか分からないけど、とにかくかわいい。すごく素敵な女の子。
それに比べてわたしは、引きこもりで、友達もそんなにできたことがない、いっちゃんはたくさんまわりに人がいるから、「そんないっちゃんと自分じゃ、話が噛み合わないのではないか」と心配でなかなか寝れなかった。
…そんな心配は杞憂におわった。
いっちゃんと、京都で過ごした時間はとてもかけがえのない思い出になった。
はじめこそ、緊張して自分が何を話しているのかよく分からない状態だったけど、次第に慣れてきて自然に話せるようになった。
その日は快晴で、空がきれいな日だった。
そんな空を見て、私は無意識に「空が青くてよかったなぁって思うときがあるんだよね。」と呟いていた。
…こういう話をすると、大抵、「そうだね」と言われて終わるんだけど、いっちゃんは「わたしもおんなじことを思ってた!!」と飛びついてきてくれた。
それから、世界の輝きの話をたくさんした。こんな話を人としたことがなかったから、すごく嬉しかった。
恵文社に行く途中、バスを降りて、鴨川を一緒に眺めた。
水面がきらきらと輝いていた。たぶん、おばあちゃんになっても忘れられない思い出だ。
それから、いっちゃんとは、一緒に夜のお散歩に行ったりもした。
お家の近くにおすすめの夜景スポットがあるということで、そこを目指して歩いた。
他にも、一緒に料理を作ったり、市内を自転車で散策したり、川で絵を描いたりした。わたしの憧れの喫茶にも一緒に行ってもらった。
いっちゃんといると、心が軽くなる。温かい気持ちになる。やさしい気持ちになる。世界が、ひとりでいるときよりずっと輝いて見える。
一緒にいて、そんな気持ちになる人ははじめてだった。
心から、大切にしたいと思った。